サンマ1尾10万円の値段設定はどうして起こった?

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7月中旬、まだ夏真っ盛りというのに、ニュースに飛び込んできたのはなんと「秋の味覚・サンマ」——。
えっ、もう?と思ったのも束の間、さらに驚かされたのはそのお値段。なんと、1尾10万円という破格の価格設定だったのです。

確かに、初物は高値がつくこともありますが……桁が違う。

毎年、ニュースで「初サンマ」の話題が出るのはお盆を過ぎた8月中旬ごろ。
ところが今年はなんと、7月中旬という異例の早さで、その姿が登場しました。

しかも注目されたのは、その“初物”の時期の早さだけではありません。
なんと、1尾99,999円という驚きのプライス。つまり、ほぼ10万円です

この破格のサンマを店頭に並べたのは、札幌市内のあるスーパー。
例年よりも約1か月早い“初物”ということで、ニュースでも大きく取り上げられ、ネット上では一気に話題となりました。

特にYahoo!ニュースのコメント欄には、多くの驚きや疑問の声が寄せられました。その一部を抜粋してみると

話題作り優先のご祝儀相場から、売るための価格に切り替えただけでしょう。法外な値段をつけて、マスコミに騒いでもらえたので、良い宣伝になったはずで、店としては良かったのではないでしょうか。

一方で、ご祝儀相場を元に、高くなったとか、食べれなくなるとか一喜一憂しても仕方がありません。また、過剰な報道で「今年のサンマは高くて手が出ない」という印象を消費者に与えるのは、考えものです。

勝川俊雄:東京海洋大学 准教授、 海の幸を未来に残す会 理事

引用:Yahooニュース

たしかに、初物に高値がつくのは日本ならではの文化。
しかし、識者のコメントにもあった通り、「話題づくりの価格設定」として理解できる一方で、あまりに現実離れしているとの声も多く上がっています。

というのも、仮に1尾5万円に値引きされたとしても、買う人はいるのでしょうか?

実際、Yahoo!ニュースなどに寄せられた一般の人々のコメントが、この疑問にしっかりと答えていました。

お店もご祝儀と話題目的で買っているからそう売れるとは思ってないでしょう。 しかもさんまなんて鮮度が命なので日数が経つと価値がない。 それでも初物は初物。 日本人ならではの粋なのだと思います。

江戸時代は初物に高値が付いて庶民もなけなしの金をはたいて買った。特に初鰹は争うように買った。一尾一両だから今なら10万円近い金額になる。初物を食すと長生きにつながるという信仰(縁起物)もあった。現代でも初競りには高額が付く。

広告代理店に数百万円支払うよりも、 百万円未満/kgの破格の高値で落札して前代未聞の10万円/尾で販売して99%オフで売るって一連のストーリひとつひとつがニュースのヘッドラインを飾り、広告以上の宣伝効果になっていますね。

引用:Yahooニュース

ふと考えたのですが……もし本当にこの10万円のサンマを買った人がいたら、今のニュースってどう報じるんでしょう?
名前や顔写真を出すことは、今の個人情報保護の観点から考えると、さすがに難しいですよね。

とはいえ、地元の人なら「○○さんが買ったんじゃない?」とピンとくることもあるのかもしれません。

実際、Yahoo!ニュースのコメント欄には冷静な声も目立ちました。特に印象的だったのが、こんな意見です。

「サンマに10万円の価値はないけど、10万円かけずにニュースにしてもらえたなら、それが一番の宣伝効果」

引用:Yahooニュース

そう、まさにその通りなんですよね。
これって広告費ゼロで全国報道されたようなもの。実際、テレビやネットニュースで連日取り上げられ、SNSでも大きな話題に。

つまり誰も買わなくても目的は達成されている、というわけです。

昔から「初〇〇」の価格は、その年のニュースの見出しを飾る“時事ネタ”として定番ですよね。
季節の移ろいを感じさせてくれる、いわば風物詩のひとつです。

特に秋の味覚はワクワクするものが多く、梨、栗、みかん、新米、そしてサンマと、どれも食欲をそそる顔ぶればかり。

たとえば梨。初競りで高値がついたとしても、1玉1,000円程度。
確かに高級フルーツではありますが、「ちょっと贅沢したいときに…」と思えば手が届く範囲です。

ところが今回のサンマは、桁違いでした。

北海道・釧路市内のスーパーで1尾99,999円、つまりほぼ10万円の値段がついたというのです。
背景には、卸売市場で1キロあたり888,888円という過去最高値がついたという“ご祝儀価格”の事実があり、それに合わせてスーパー側もインパクト重視の価格設定をしたようです。

ニュースではこのスーパーの名前は明かされていませんでしたが、店頭に並んだ“99,999円のサンマ”には写真を撮る人が何人もいたとのこと。
もしかすると、SNS(Xなど)にポストされて、一気に広まったのかもしれませんね。

実際、「これはちょっとやりすぎでは?」という声も多く、ネットでも大きな議論に。
ご祝儀価格とはいえ、サンマ1尾に10万円近い値段をつけるのは、果たして“風物詩の延長”で済まされるのか…。

“季節感”と“話題性”のバランスって、やっぱり大切ですね。

なんと、スーパーでは“99,999円”の値札を取り下げて、その下に「応相談」と書いていたところ、
夕方に年配のお客さんがやってきて、「いくらになるの?」と声をかけたのだそうです。

そして結果的に、1尾1,000円で販売、3尾で3,000円に。
無事に夕食の食卓に並ぶことになったとのこと。

「初物だから少し高くてもね」と思える価格。
やっぱりそのくらいが“現実的”ですよね。

ちなみに、X(旧Twitter)でも

家は今晩200円のサンマにしました。

という投稿があり、やっぱりサンマは日常の味なんだなと感じさせられました。それにしても、もし本当に1尾10万円で買ったとしたら、どんな夕食になるのでしょうか……?
箸をつけるのに緊張して味なんて覚えていられないかも。

こうなると気になるのは、次に“狙われる”初物は何かということ。

やはり筆頭は、初鰹(はつがつお)ではないでしょうか。

春の初鰹は例年3月〜5月、秋の戻り鰹は9月〜11月がシーズン。
今回のサンマのように、少し前倒しで“超早出し”されたら……同じような価格設定が飛び出す可能性も?

実はこの鰹、歴史的にも「初物価格」とのつながりが深い魚です。

なんと江戸時代の記録によると、初鰹に1尾24万円(現代換算)もの値がついたことがあったとか。
江戸っ子にとっては、「粋」と「季節の先取り」は命よりも大事!?なんて言われていた時代、
「人より早く初物を食べる」ことは一種のステータスだったのです。

それを思えば、今回の“サンマ騒動”も現代版の「粋」なのかもしれません。
とはいえ、いまの時代にサンマ1尾に10万円を払って初物を味わう“江戸っ子”がいるのか?
これは正直、ちょっと気になります。