Z世代とは、1990年代半ばから2010年代前半に生まれた、現在おおよそ12歳から28歳前後の若者を指します。そんなZ世代のライフスタイルを象徴する言葉が、「タイパ」、すなわちタイムパフォーマンスです。
「タイパが良い」とは、短い時間で大きな満足を得られることを意味します。時間を効率的に使い、やりたいことを短時間で済ませることを重視するZ世代にとっては、映画やテレビを2倍速で視聴するのが当たり前となっています。
映画館で映画を見るのはタイパが悪いのでは?
映画やテレビをサブスクリプションで倍速視聴するのが当たり前のZ世代にとって、映画館で映画を観るという行為は「タイパが悪いのでは?」と思われがちです。しかし、実際はそうでもないようです。
特に近年の夏は例年にも増して暑さが厳しく、屋内で過ごせる場所の人気が高まっています。また、映画館は手軽にちょっとした非日常を味わえるため、むしろコストパフォーマンスが良いと感じられることもあります。
さらに、イオンシネマのような地方のシネマコンプレックス(シネコン)の多くはショッピングモールと併設されており、まるでテーマパークのような存在です。
ショッピング、映画、食事などを一か所で楽しめるため、一日中快適に過ごせる施設がそろっています。
つまり、炎天下の中を移動する必要がなく、ひとつの場所で買い物をして、食事をして、映画も楽しめる。移動の手間が省けることで、Z世代が重視する「タイパの良さ」を実現しているのです。
正に今、Z世代の鈴木福さん、プライベートは何してる?学業と仕事の両立は、と思ったら鈴木福は仕事と学業の両立は出来るの?プライベートの時は何してる?もご覧ください。
この夏の映画はヒット作が多く観客数も増加
2025年の夏は、『国宝』や『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を目当てに、多くの人が映画館に訪れ、平日でも大変な混雑となりました。
8月中旬時点で、『国宝』の興行収入は100億円を突破し、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は257億円を超える大ヒットとなっています。
さらに、『ジュラシック・ワールド 復活の大地』も日本での興行収入が30億円を突破し、『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』も177億円を超えるなど、邦画・洋画ともに客足が好調に推移しています。
このような映画人気の傾向はイギリスなどの海外でも見られ、過去6年間で観客層が高齢者中心から若者中心へと移り変わっているそうです。
2019年には、最も多かった来場者層は65歳以上で、次いで55〜64歳でした。しかし2025年には、25〜34歳が最も多く、観客全体の16%から31%へと倍増しました。また、18〜25歳の来場者も17%から24%へと増加しています。
コロナ禍では、映画館という閉鎖空間ではソーシャルディスタンスを確保するために、座席を一つずつ空けて鑑賞していましたが、2025年現在ではそうした制限も解除され、満席での鑑賞も可能になっています。
イギリス西部ブリストルにある独立系映画館Watershedでは、25歳未満へのチケット販売比率が、2021年のロックダウン解除直後には19%だったのが、2024年には27%にまで上昇しました。
引用:GIZMODO
この傾向は、シネコンだけでなく、独立系の映画館でも同様に見られます。
SNSなどの影響もあり、古典映画やインディーズ映画、アートハウス作品へのアクセスが容易になったことで、独立系映画館への関心が高まっている可能性があります。
また、イギリスのZ世代の間では、映画鑑賞後にSNSやレビューサイトに感想を投稿することを楽しみにしている人も多いようです。まさに、SNS世代ならではの映画の楽しみ方と言えるでしょう。
映画館の映画は2倍速で見られないからこそ
Z世代にとっては、映画やドラマを倍速で見たり、10秒スキップを多用したりするのが当たり前になっています。
当然ながら映画館ではそういった視聴スタイルはできませんが、それでもタイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ世代が映画館に足を運ぶようになった背景には、いくつかの理由があるようです。
それは、スマートフォンの画面では得られない「迫力」「映像美」「開放感」が映画館にはあるからだと言われています。
タイパを重視する日常の生活リズムの中では得られないような深い満足感や、スマホから解放される環境を、心地よく感じている人が多いようです。
実際に、「オフになれるのがいいですね。映画館にいる間はスマホを触りません。家にいたら、たぶんずっとスクロールしてると思います」と話す人もいます。
一方で映画館のマナーを知らないZ世代への苦言も
今まで映画館で映画を見るという行為から離れていたZ世代が映画館に来るようになったことに対しての意見もあります。
嬉しい傾向という声
映画館好きとしてはうれしい傾向です。タイパ世代が劇場に足を運んで観るということは、映画館での鑑賞にそれだけ価値を感じているということですもんね。 スマホ画面はもちろん、よほどの大画面テレビと5.1chサラウンドシステムでも入っていないと、家庭では映画館で見る迫力や再現性は得られませんから。
24歳、映画館で映画を観るのにハマってます! 色々な良さがありますが、大画面と音の迫力、映画を観て考える以外にすることがない空間、帰り道が好きです。 サブスクでも観られますが、つい携帯をいじってしまったり家事をしたりと映画に集中できません。私の場合はですが。 仕事終わりの金曜の夜、映画を観て、ゆっくり色々なことを考えながら帰る。至福のひとときです。
引用:Yahooコメント
コメントには、上記のように「これまで映画館に足を運ばなかったZ世代が映画を観るようになってくれて嬉しい」「映画館で観る良さにハマっている」といった声が見られました。
一方で、それとは対照的に、次のようなコメントも多く寄せられていました。
映画館で映画を見るというマナーは守って
映画館での当たり前のマナーが全く無い方が多々見られます。 こちらにもありますが、携帯の電源を切るのはもちろん、食べ残した物を出口で回収しているのに座席に置きっぱなし、上映中に、べちゃくちゃ喋る、などなど(後略)
しかしこの間F1を見ていたら1席明けて隣に座った男子大学生2人が、映画の途中でコンビニおにぎりを食べ始めた。外部で買ったものを食べるのもご法度ですが、さらに途中でがさがさと音を立てて食べるというマナーはいかがなものかと。Z世代だからなのかわかりませんが、こちらもせっかく高いお金を払うので良い環境で見たいと思います。(後略)
引用:Yahooコメント
映画館で映画を観るという経験があまりないためか、自宅でくつろぎながらサブスクリプションで映画を観る気軽さを、そのまま映画館にも持ち込んでしまう人もいるようです。
レジャーといえば映画館で映画を観るのが一番だった世代からすると、Z世代に対して言いたいこともあるようです。
しかし、映画を映画館で観る魅力には、そこでしか味わえない臨場感や、大きなスクリーンによる迫力、集中して鑑賞できる環境、そして見知らぬ人たちと同じ映像を共有し、心を動かされるという不思議な一体感などがあります。
この夏は記録的な猛暑も影響し、映画館の観客数が伸びているという傾向もあるようです。映画館で映画を観る楽しさ、そしてその場にふさわしいマナーが、Z世代にも自然と根付いていくことを願っています。